VIDEO PARTY 2013 Feb.を終えて
VIDEO PARTY開催の結果は正直予想外でした。
それは僕の考えが間違っていたことを思い知らされたからです。僕は個人が制作した映像を観る人、興味を持つ人はとても少ないと思っていたのです。予想としては、お客さんの数は40人程度ではないかと思っていたのです。出品者の数も15名程度、作品時間数は多くて2時間半だと考えていました。しかし結果は観客動員100人を超え、出品者は30人以上、上映時間は4時間半、ライブを入れると5時間半の規模となっていたのです。
これはパーティーと言う範疇を越えてしまっています。うれしい悲鳴とはよく申しますが、本当の悲鳴をあげていたのです。まず今回のVIDEO PARTYを開催するに至った経緯をお話しなければなりません。
今世界中には多くの映画祭があり、上映会も開催されています。 ショールームとしての商業作品を扱った映画祭に関与するつもりはありませんが、インディペンデントな映像・映画祭には各地で関わることができました。歴史のあるところ、始まったばかりのところ、やむなく休止してしまったところ・・・。スタッフの人たちとも多くを話しました。情熱もあり素晴らしい人達ばかりで、そんな人達と僕は作品を出品するという立場で関わりたいと思い、この20年”映像作家”として活動してきました。
しかしどうにも日本での状況がよくない、京都と言う地方都市では観る機会もこの20年激減しています。何より自分自身、日本で発表することも無くなってきており、学生の「先生の作品はどこで観れますか?」の声から観せる場所も無いなぁと痛感するに至ったのです。
数年前にヨーロッパでの映像祭に出向いた時に、日本人の作品を観ることがありました。その時「どうして日本人の作品を海外で観なければならないのだろう?この作品を日本で知ることが出来なかったのだろう?」と思いました。
もっと観たいし観てもらいたい。
それが、今回日本で上映活動をしようと思ったきっかけです。日本には昔から上映活動を続けている先人達がたくさんおられます。しかし最近は少し元気が無いように感じます。 今の若い人達の中にも、熱心に上映活動されている方がおられます。しかしとても戸惑っているように見えます。 そんな今の上映活動の状況には問題があると思ったのです。
一番の問題は、観る人が不足していることです。今回VIDEO PARTYにお越しくださったような人が居ないのではありません。幅広い表現の作品の観方、考え方、受け止め方を、多彩な作品を楽しめる観客が不足しているのだと思いました。しかしこれは観客側が悪いのではありません。我々作者側が長い間きちんと伝えてこなかったことが悪いのです。結果、自由な表現の作品を観ると「わけがわからない」と観客は離れていってしまうのです。が、「わかりやすいものをつくれ」というわけではありません。わかりやすいことだけを求めた映画、放送、音楽、出版などコンテンツ産業が視聴者の獲得に苦労していることを見れば、「わかりやすい作品」ばかり存在することが正解では無いことがわかると思います。
実際には「わけがわからない」作品など無く、作者が必然を感じて様々なアプローチで思いを形にしようとしたものが作品です。それは「わかりやすい」と言われる作品も「わけがわからない」と言われる作品にも違いは無いはずです。
問題は多様性が必要なのです。多様性を楽しいと受け入れる状況を作り出さなければなりません。そのために定期的に開催する、様々な作品を扱う上映会が必要なのだと思いました。
形式も今まで通りの観せ方では無く、もっと楽しむための仕掛けが必要です。今回はカフェという場所で歓談をする場所と上映会場が特に仕切りも無く、自由に行き来できることにこだわりました。そのために今回お借りしたマルニアトリエカフェさんは理想的な会場でした。確かに映像に集中するためには上映会場を別に用意したほうがいいと思います。今回もつくるビルさんから「空いている部屋を用意できますよ」と言って頂いたのですが、お断りをしました。
ヨーロッパの映画祭では観客は自由に出入りをし、作品がつまらなければ直ぐに出ていってしまいます。そのかわり面白ければ最後まで観賞した後、拍手を送ってくれます。出入りの数や拍手の大きさで自分の作品の感想となるのです。ものすごくわかりやすいシステムだなと感心をしたものです。そういう観方を導入したかったのです。「一生懸命観て欲しいけれど、難しい顔で観るのはやめましょう」という上映会なのです。
今回の反省点も多々あります。一番失敗したことは作者の考えや作品についての解説や意見交換などが出来なかったことです。作品の観方のプレゼンテーションが全く出来ませんでした。少し言い訳をさせて頂くと、当初は作品上映を細かく分け、3〜5本に一回は解説やトークをしましょうと決めていました。しかし上映時間が膨らみ、観るだけでも相当の時間がかかってしまうことになったので、その計画は諦めざるを得ませんでした。他にも観客席の動線が作れなかったこと、出品者の紹介が出来なかったことなど、こちらの不手際がたくさんあります。
それらの反省も踏まえ、また次のVIDEO PARTYを開催したいと思います。もっと多くの観客や出品者が交流し、映像文化に対する多様性を広げたいと考えています。
「楽しいイベントが出来てよかったね」だけでは我々が主催する意味はないのです。
今回は確かに狼煙が上がったと実感しています。この火を消さぬように次の流れにつなげていきたいと思います。
感覚を拡張した自由な表現の世界へと。
皆さまの観客、出品者としてのご参加を心よりお待ちしています。
2013年2月 由良泰人(映像作家)
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