VIDEO PARTY 2014を終えて

kyoto02 7月19日〜21日の3日間、京都シネマにてVIDEO PARTY KYOTO 2014は行われました。今回で開催は5回目となりますが、FacebookやHPで募集した一般公募という形では2回目となります。ドラマからアニメーション、ドキュメンタリーや実験映像もあり、バラエティに富んだ個人の眼差しでつくられた映像が33本、250分に及ぶ作品が集まり、100人を超えるお客さんに来て頂きました。

運営上の反省としては、せっかく多くの作者の方に来ていただいたのに、あまりお話ししていただく時間が取れなかったこと、上映用のデータに問題があり、作者を始め、観客にもご迷惑をおかけしたことなどが挙げられます。これらは次回開催に向けての課題であり、特に作者のトークや作品解説は充実させて行きたいと考えています。 さらに今回は、台湾で開催されている青春未来影展との作品交流として6作品を上映。またVIDEO PARTYの作品も9作品台湾の台北當代藝術館にて8月10日に上映することも出来ました。

近年、映像制作を取り巻く環境は日々発達をし、容易に完成度の高い作品を制作することが可能になりました。もはや映像は一時のプロフェッショナルだけが制作するテレビや映画館で観るような作品だけでなく、様々な手法と内容で個人が自由な表現として既製の枠にはまらない多彩な作品が制作され続けています。

しかし我々は、制作することは容易になりましたが、観せることに関してはまだまだ課題が多いと感じています。さらに作品のさらなる向上を果たすためにも観てもらうことは非常に重要だと考えます。インターネットで公開するという手法も考えられますが、インターネットに”観賞体験”として、また”体験の共有”としての役割を果たせているとは言えない部分もあり、また”作者”としての自覚も生まれにくいように感じます。そして京都という場所にはたくさんの芸術系大学があり、映像を制作する学生もたくさんいます。しかし卒業した後に作品制作を続ける作家はほとんどいません。

私たちはこの原因の一つとして発表する場の少なさを感じています。

他のジャンルの作品であればギャラリーなど作品発表の場はたくさんありますが、映像の個展をするために、例えば1本2分の作品だけを上映するわけにもいかず、全体の本数や分数、上映機材など越えなければならないハードルが多々あります。

kyoto03 今回VIDEO PARTYを企画する際に考えたことは、そんな映像をたくさん集めた上映展をやりたいというものでした。そうすることで、どこかで眠っていた映像作品や、燻っていた制作する気持ちが掘り起こされ、作品が集まり、その上映を観た人たちがモヤモヤしながら帰り、何かを始める。そんな連鎖反応を起こさないか、という期待を持って企画しました。次はぜひ皆さんにも参加していただきたいと思います。

 (文責・由良泰人)



VIDEO PARTYセレクトプログラムの台北上映報告

すでにご承知の通り、VIDEO PARTY 2014では、台湾からのゲストプログラムを招聘して、プログラムディレクターや作家・スタッフ総勢9名の来日・参加を得ました。これに応える形で私たちは、8月10日の青春未来影展に、今期VIDEO PARTY参加作品から9作品をセレクトして持参。上映とシンポジウムを敢行してきました。本来すべての作品を出品できればベストだったのですが、時間と言語による制限等を鑑みて、9作品に絞りました。

訪台メンバーは、プログラム協力スタッフの櫻井篤史、林ケイタ、出品作家の福井麻理が9日に台北入りし、当日10日の午前に、チーフスタッフの由良泰人と京都上映の際の会場となった京都シネマ支配人横地由起子が合流するはずでした。しかし折しも台風11号の影響で10日の関空は大荒れとなり欠航。結局、本番上映とシンポジウムは、9日入りした3名のみで行うこととなりました。

moca 上映会場は、台北中央駅から一駅目にある臺灣當代藝術館。日本語で言うならば国立現代美術館というところでしょうか。以前は日本統治時代の小学校だったという煉瓦造りの重厚な二階建ての一階、キャパシティーは約80人程度のホールです。

プロジェクター投影で、送出はPCからのデータ再生でした。画面サイズは、320cm×180cm程度、投影距離は約6m。ホールの形状は横長で、左右両端はやや見づらい環境でした。天井高は申し分ないのですが、ホール上半分の空間には、メディアアーティスト山口勝弘氏のカラフルな常設展示作品「龍」が絡み合っていて、美術館ならではの雰囲気ではあるものの、映像と純粋に向き合うという意味では多少気になるところ。taipei01 そもそも上映中のホールは閉め切りません。投影面に向き合う壁面の両サイドに開口部がありこのドアは閉めないので、廊下の外光がやや入ります。画面へのカブリなどの影響は殆ど有りませんでしたが、人の出入りが自由なので、客席後方はやや落ち着かない雰囲気でした。

上映は、PCのマシン性能の影響か若干音声ズレが発生してやり直したりもありましたが、際立った途中退場者もなく好評のうちに無事終了しました。

上映後、櫻井、林、福井が前に出てまず自己紹介。プログラムディレクター林瑋倫氏が通訳をしてくれました。

taipei03 櫻井篤史は、トークポイントを「日本における個人映像の歴史的な位置づけ」に置いて、特に実写の台湾作品に多く見られるストーリーのある短編劇映画と、ノンプロットかつ抽象的なアプローチが傾向として言える日本の個人映像との比較考察を中心に、8mmフィルムから家庭用カメラへと道具が変遷した自己史を例にとって話を切り出しました。

その歴史的な流れを引きついで、林ケイタが美術作品における映像の役割、特にインスタレーション作品についての日本の現状を報告しました。

会場からは真摯な質問が多く出て緊張度も高く、例えば「作家は作品の時間をどのようにして決めているのか」など、重厚な質問攻めに結講慌てる場面も。

taipeo02 福井麻理は、出品作家としてただ一人参加したために会場からの質問が集中。印象的なのは、質問の質が日本とは微妙に違う事でした。例えば、福井作品に出て来る白い服の人影について、「あれはどういう意味か」と直截に訊いてくるのが国内だとすると、台北では、「あの白い人影は作家自身の投影なのか」というように鑑賞者自身の批評眼が含まれた質問が多いと感じました。これはお互いに取ってもかなり刺激的であり、単純な質疑というよりは認識作業であり、大変な審映眼(そんな言葉があるとは思わないが)揃いだなと興奮しました。

また、60分間のプログラムの間、館長がずっと鑑賞くださって、(そんな事は滅多にないらしい) 終了後、「とても興味深い」「これからも交流上映できればよい」「どんどん企画を持ってきて欲しい」というお声がけを頂いたのは、今後に向けた成果だと思います。

台風直撃のアクシデントがありましたが、諸々細かい困難をなんとかクリアして、全体を見通せば、まずは海外遠征上映としては成功したと言っていいかと思います。

taipei04 何と言っても次に続く可能性を館長から引き出せたのは大きかったし、台北の観客の驚くべき真摯さにも感動しました。また、福井麻理への集中質疑からも分かるように、やはり作品を出品するという事と、同時に、その現場へ行って空気を感じる事の大事さを今更ながらに痛感しました。初めての海外自作上映に立ち会えた福井麻理の収穫はとても大きかっただろうと思われます。

以上、概要ですが台北上映の報告とします。

(文責・櫻井篤史)

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